スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--/--/-- --:-- | スポンサー広告  

【Mレビュー番外編】ゴブリンスレイヤー1~3巻の感想

 エロRPGではないですが、TPRG風ファンタジーラノベことゴブリンスレイヤーは実質エロRPGという理論でレビュー。

 TRPGのTはテクノブレイクのTです。


・ゴブリンスレイヤーって?
 Webのやる夫スレで連載されていた「ゴブリンスレイヤー」の小説or漫画版。
 詳しい経緯はGA文庫のサイトを見るのが一番てっとり速いですね!

 ゴブリンスレイヤー(GA文庫公式サイト)


・TPRGでゴブリンの巣をいぶす「困ったちゃん」PCがファンタジー世界に実際にいたら!? というお話。

 TRPG(以下、卓ゲ)ではたまに思い出したように話題になる問題があります。
 たとえば、首ナイフ問題。「人質の首にナイフ突きつけられてるけど、ぶっちゃけナイフで刺されたダメージくらいじゃ(ゲーム的には)死なないよね」みたいな話です。そのナイフで12点ダメージが入るけどそのキャラはHP30あるから死なないぜ! みたいなゲームであるが故のメタな話と現実の矛盾が故の問題なわけですな。

 この「ゴブリンの巣をいぶすプレイヤー」も、首ナイフ問題と同じ古典的な問題行動のひとつでした。

 現実的に考えたら、巣穴にいる害虫を退治するなら薬剤焚くでしょ! 当たり前じゃん! なのですが、これがゲームになると、「いや、これダンジョンアタックして中にいる敵を倒すのが目的のシナリオなんだけど……」となってしまい、お話がそもそも破綻してしまうわけです。最悪の場合、依頼を受諾しました! 敵を戦闘せずに倒しました! 終わり! で終わってしまうのでゲームにならなかったりする。

 ゴブリンスレイヤーは、そんな困ったちゃんPLのキャラクターが、実際のファンタジー世界にいたら? みたいなアプローチで展開されています。
 そう書くとギャグっぽいですが、卓ゲ者にはくすりと来る導入なだけで、実際にはファンタジー世界のモンスターを理詰めで現実的に撃破していくのが痛快な作品でした。

 特に漫画版の冒頭はゴブリンの生態に関する描写も追加されているので、より主人公のプロフェッショナル感が味わえるうえに1話と2話が無料で見られるので、オススメ。

 ただ、世界観自体はダークを標榜するだけあってハードな部分もあるので、リョナグロが存在します。原作では一文でさらりと描写されていたり、あまり描写に固執していないのですが、漫画版だと執拗に描写を強化してくるので露悪的に感じてしまう場合がありますので、その点はお気をつけを。

・で、どこがエロRPGなの。
 今作の敵は一般的に雑魚敵とされるゴブリン。
 そして、女冒険者は負けると捕まって犯されるという……。

 はい。

 実際エロRPGですね。

 ルゴーム砦とか好きそうとか勝手に思っていたんですが、これを書くためにやる夫スレ漁ってたらそもそもお互いやる夫スレ繋がりですねこれ!

 ちなみにルゴーム砦ってなにって人! ここでエロRPGについてまとめてるからよろしくな!!

 とはいえ、犯されたのちに死ぬので、全年齢ものでは描写で端折られているだけで、実際には戦いの果てにこういうこともあるのだろうな……。的な感じなのでエロいかというと(原作は)特にエロを前面に押し出してるわけではないんですが、そういうことがおこなわれてる可能性が示唆されているのが大事なんだよな。

 なにより、「運」が大事であると描写しているのが、現実感と無情感を童子に演出していて良い。
 どんな冒険者であろうと、サイコロの目が悪い(=運が悪い)と死ぬ。そんな現実とTRPGの要素を重ね合わせて進行するストーリーラインが、現実とゲームの重ね合わせとしていいのですね。

 TRPGは、サイコロを振って遊ぶゲームなので、サイコロを振る都合上、運が悪いと熟練冒険者でも雑魚に負ける可能性があるわけです。(作中でも、単に運が悪いというだけで熟練が殺されてしまいます)
 電子ゲームなら、絶対の固定値があり、一定の乱数の間で数字が上下するだけなので、こういった運による致命的な失敗をよりシビアに描写するのはTRPGモノならではと言えるでしょう。

 そして、そんな中でダイスを振らずにクリアしにいく主人公、というのが生きてくる。
 前述のゴブリンをいぶす問題は、要するにダイスを振らずに口でゲームマスターを言いくるめる、いわば「口プロレス」での勝利なわけです。運が介在しないので、運悪く死ぬということはない。
 ゴブリンスレイヤーとは、この口プロレスの達人なわけです。

 作中ではゴブリンの生態を理解して対応するシーンは、TRPGでいうのところ「GM、ゴブリンってこういう習性あるからこれで一網打尽でしょ?」「ま、まあそうだね」と説得して有利な状況を得ていると解釈できます。

 ゴブリンスレイヤー作中には、実際にダイスを振って冒険者たちを導く神様たちがいます。だが、そんな神様にダイスを振ろうとさせない。自分たちの生き死にを運命にゆだねたりしない、とする意志。
 TPRGの困ったちゃん問題も視点をPLからPC自体に下げることで、こんなに美味しくかっこよくなるのだなー、というのは非常に気持ちがいいものですね。


 特に1巻の「ゴブリンという群体の恐怖」とそれに対して「運に頼らない(=固定値信者)主人公が策略とノウハウで立ち向かう」絶対ゴブリン殺すマンな話。1体の強い個体よりもゴブリンという集団の方が怖い、とする主人公。そしてひとりでゴブリンを殺してきた主人公でも倒せないほどのゴブリンの集団の出現……。
 と、1巻の内容(AA版と同様)は1冊で綺麗に纏まって面白い内容でした。

・ちなみに
 で、運に頼らない戦いなんてすごい! TPRGでもしよう! と思うかも知れませんが、何故こういうPLが困ったちゃんと言われるかというと、「これをされたらゲームにならねえ!!」ってことです。
 だって、ゴブリンのデータを用意してダンジョンもつくって、そのダンジョンを攻略しようという話なのにダンジョン爆破されたらもうEDにいくしかないですからね……。

 作者も真似しちゃダメと常々言ってるのはのはそういうことですね。満場一致で全員楽しくやれるならまた別だぞ!
 工夫するのはいいことですよ!!


・ダークファンタジーだけどダークに酔ってないのもいいよ
 グロくない、というか。実際にばさばさ人は死ぬんですが、残虐描写に酔っていないのが好感触。「ほらほら、悲惨に殺すよ~」と丹念に死んだ人間の描写を積み重ねず、ねちっこくないドライな文体で先に進めるので、悪趣味さを感じないようになっている。

 だって、蛮族のような種族に女性が捕まったら、こうなるだろう。という作品世界の当然のリアリティを書いているだけなので、悲惨な目にあわせたいから悲惨なことにさせよ~ とならないのってわりと安心します。物語的に必要な悲惨さなので。

 ただ、さんざん女冒険者だけ悲惨な目に遭う描写が男性が殺される描写より相対的に多いので、その辺り気になるといえば気になるでしょう。女性の方があからさまにリスキー。

 実際そうなんだろうし、男性の方が捕まったときの生存率は低いのでしょうが、死亡描写は圧倒的に女性キャラの方が多いし内面描写も(特に1巻の中盤で全滅した堅実PT)女性キャラの悲惨さを書きすぎて、うーん、ここはリョナ描写くさすぎるのでは……となったのが悩ましいところ。

 堅実はPTも運悪く死んでしまう悲惨さの描写にはなっているのですが、のちのゴブリンと親玉撃破に対するカタルシスに繋がってないのが単純にストレスとしてわだかまるんですよね。リョナ描写が好きなら違うのだろうなぁ。
 あと自分でやったセッションの全滅PTの話とかエピソードを再利用している気がするのだろうか、こういうのって。

・1巻が綺麗にまとまっていたため、2巻以降がどうしても……
 1巻がコンパクトに纏まっていたのですが、2巻目以降は敵がゴブリンなために、イマイチ発展性に欠ける内容になっていました。

 1巻は短編の連作方式のため、一般冒険者らしく複数の依頼を受けるわけですが、
 2巻は長編の話になります。一本の依頼に搾って活動するのです。

 これ、ゴブリン自体ではなく、ゴブリンが与えた影響のアフターケアのような話で、そこを調理するのはとても好きです。ああなってしまった人は、以後どう生きて行くのか? に触れていくのは、悲惨な話を悲惨なだけで終わらせない掘り下げてくれるのは単純に好みでした。

 が、その目的のためにある小目的が、ダンジョン内にいるゴブリンを倒すだけではイマイチ盛り上がりにかけてしまった。

 内容としては、街の地下がゴブリンの巣になったので、すみやかに処理してほしい……というものなので、何度も街とダンジョンを行き来して挑戦することになります。引き際を誤ると即死が待ち受ける戦い、こういった行ったり来たりのダンジョンハックは緊迫感があって面白いのですが……。
 ゴブリンがいくら厄介といえども、基本的に相手の個体と因縁があるわけでもなく。戦闘自体には盛り上がるものはどうしても少ない。

 そもそも、依頼自体に時間制限がないのです。ゴブスレが直々に頼まれたので当事者性はあるのですが、はやく全滅させないと街がヤバい、という差し迫ったものでもないので、戦闘以外では差し迫った危機がないのです。

 はやく倒さなければ街が地下に落とされてしまう! とか、そういった一大事があれば気が引き締まるのですが、そもそもそんな大事ならゴブリンスレイヤーではなく国が出張ってしまうので、「あくまで一般冒険者である」「一般冒険者と雑魚敵の話である」ことで話に制限がうまれてしまっている印象でした。

 まあ、あまり派手すぎない方がゴブスレたちの立場からしたら妥当かもしれないのですが、
 「物語を終えているときに、なにかが話が前進している気がしない」ことが気になる所です。宝物を得るとか、目的地に近づいただとか……。

 女神官さんも、当たり前ですがなかなか階級があがりませんからね。
 主人公の精神的な問題は変化があるし、事件も解決しているし、そもそも何か変わる、意味がある戦いになってしまったら英雄譚とか別のジャンルに変わってしまうのが、この小説の大変なところでしょうね……。

 3巻でも、ゴブリンはもう話のギミック程度。単純に、学習能力があるとはいえ主人公はプロなので学習させないように動くわけです。しかもまともに人語でコミュニケーションとろうとしないので、必然、ドラマを作ろうとしたら裏に人間を据えることになるのですが。
 やりすぎるとゴブリンスレイという本筋からズレるし、かといってゴブリンを強化しすぎるとゴブスレ以外もゴブリン退治の重要度をあげるのでゴブスレの異常性が薄れてしまうし成り上がりものにジャンルが変わってしまう可能性もある。

 ならこのままゴブリン退治をつづけていくだけで面白いかというと、それは過去の焼き直しになってしまう。
 あと、「他の王道ファンタジーで強いとされる武器防具を有り難がるのは素人(にわか)」みたいなニュアンスの主人公のスタンスが、だんだんと鼻につくようになってしまうところもある。繰り返される定番ネタがもう食傷気味というか。

 もちろん、これはあくまでゴブリン退治に限ったことだし、ゴブスレさん自体の技量は自分より隠したの階級相手に不意を打たないと勝てない程度(まあ、不意を打つ知能が武器なのだが)なので、こんな珍しいヤツがいますよ、な話なのだが。
 1巻で強敵を倒した方法のために、そのツケがあとの話で回ってきているようにおもう。どんな強敵でも単体なら口プロレスでどうにでもできるのだろうし、かといって群体のゴブリン相手だと前述したとおり……。

 ただ、4巻ではついに自分のPT以外での冒険がある。自分は、ゴブスレさんは槍使いと話しているときが一番面白いと思っているので、これが本当に楽しみ。ゴブスレさんに必要なのは、真っ当な男の冒険者とコミュニケーションをとることだし、「冒険」を知って欲しい……。

 最近どんどんとエルフさんが恋愛方面に傾倒しすぎて、「冒険させてやる」という言葉をなかなか実行できていないので、本当にゴブスレさん社会復帰な話でがんばってほしいなー、とか思ってます。
 TRPGの困ったちゃんPLであるゴブスレさんに対してだからこそ、「冒険させる」という言葉は二重に気持ちのいいものなんですよね。

 あと、メタフィクション的な要素を多分に含んでいるので、2巻の師匠の煽りとか、他作品を意識しているのかとイラッときたりもするのですが……。
 1巻の「お優しい冒険者が」という発言はゴブスレというバックボーン、実際に逃してしまった冒険者がいたことに対応しているし、女神官さんという実際に見逃してしまいたくなってしまった人の内面を書いていて、徹底したゴブスレさんが異常なのである、と書いてあるのでまあいいのですが。

 師匠の煽りは別にゴブスレさんがいってもないことを勝手に上塗りしてくる(=対応している展開がない)ので、まあ余計だったなぁ。「成功なんて万に一つもないかもしれない。だがそれでお前は諦めるのか」な話であそこまで茶化す台詞がいれられてもな。

 さて色々いっていますが、なにか言いたくなる時点でゴブスレは先が見たくなってくる話でした。どうやって着地させるのかも気になる。というか、文句の大半は「1巻(WEB版)の内容が手堅く纏まっているせいで他シリーズが蛇足感ある……」ってだけなので。
 かっこいいんですよ。「彼はけしてサイコロを振ろうとしなかった」とか、ひたむきな努力家っぷりが。
 ただ、話が進むにつれて「普通に戦闘してるしこれ判定してるよな……」となるだけで。

・信頼できる作者のダークファンタジーはいいぞ

 あと、なにが安心できるって、作者が正統派ファンタジーも好きだと明言していることです(これを書くためにやる夫まとめめっちゃ読みあさった)。これが信頼できる。

 いるじゃないですか。リアリティ(この場合、悲惨であると同義)のあるファンタジーが優れている。「おファンタジー」みたいに茶化すの。正義の味方なんて嘘っぱちだねって大真面目にいっちゃう人!

 これも、そういうシニカルな、他のファンタジー作品へのリスペクトのない冷酷カッコイイヤッター、な作品かと思いきや、歴代のファンタジーに敬意を持ってるわけです。
 だって、この作品はこの作品のリアリティレベルの範囲で「ビキニアーマーが何故存在するのか」に理由付けをおこなっているわけです。「ありえないではなく、何故そうなっているのか考えよう」を実践しているのが、好感の持てることです(まあ、そのビキニアーマーの存在理由が気に入るかは別として)。

 ダークな作品の方がライトな作品よりすごい、硬派、かっこいい! なんて他作品sage始める人っているじゃないですか。例えば「され竜が凄すぎて他のライトな作品浅すぎ~w 本当に同じ人間が書いた作品なの~w」みたいなこと大真面目にいっちゃう人。ギャグ作品がシリアス作品より低俗とか思っちゃう人。
 で、そういった思想の人がダークを書くと、なんか露悪的な態度や考えの甘さにイラッとしてしまう。悪逆非道に酔っているのに眉をひそめてしまう。でもゴブスレはそうじゃないというのが嬉しい。

 作品の思想が作者の意見と思うなは当然の話なのですが、まあこれは作者を信頼できるかできないかの話であったりします。ゴブスレの作者は信頼できる。


 今のところ、1巻以降は荒削りすぎるというか、キャラにしてもやる夫時代のAAデザインを引き摺りすぎてて残念(まあTRPGのキャラと考えると再現キャラとしてありなのだが……)と他にも気になる点はチラホラと。ポリフォニカからGA文庫に入った身としてこのイラストが嫌いなわけは断じてないのだが、それはそれとして独自デザインみたいよね……せっかく有名な方なのだし……という。

 とはいえ、応援したくなる作品であることは確かです。

 あと、これを読むとTRPGを遊びたくなるかもしれません。僕もやりたい。最近は冒企ゲーばかりなので、もっとこうガッツリ成長してパラメータたくさんあるやつ。
 ……お金が入ったらシャドウラン、買ってみようかな。
 ということで終わり。まる。

おまけ:そういえば18禁を含むサイトにはAmazonアフィリエイトが降りないはずなのでこの記事には広告リンクがないんじゃ。買うときは最寄りの書店に行くなりAmazonで検索するなりしてね!

2017/01/17 01:25 | マゾエロレビューCOMMENT(0)  

コメント



管理者にだけ表示を許可する

 | BLOG TOP |